床下エアコンについて

家庭用のエアコン1台を床下に設置し、温風を吹き込ませて基礎に蓄熱。一方、床下は温風が滞留しないようにボックス状の基礎を配置。こうすることで、一般の床暖房と比べて床材への熱負荷も少なく、無垢フローリングの床暖房が可能になります。
エアコンの性能は年々向上しており、交換する場合も容易におこなえます。

 

 コンクリート基礎を蓄熱層とするために、基礎の廻りに断熱材を敷き詰める必要があります。地中は10m以深の温度は年中一定ですが、基礎下程の深さであれば外気温度に影響を受けるため、底版部分にも敷き込みます。断熱材は防蟻仕様の断熱性の高いものを選ぶ必要があります。また基礎外周部分にもコンクリートを打設する前に断熱材を設置しておきます。打設後に設置すると隙間をできてしまい、断熱・防蟻性が著しく低下する恐れがあります。基礎内にも断熱材を設置することもありますが、結露計算をおこなって仕様を決める必要があります。

また、エアコンの風がいきわたるよう、床下のコンクリート基礎の形状や配置を対応する必要があります。一般的には連続した仕切り壁を設置して、標準の床版の厚さや鉄筋としていますが、仕切り壁の場合だと風が滞留してしまうために、ボックス基礎を設置します。床版の厚さや鉄筋を3D構造シュミレーションで検討をおこない決めています。(北陸でこのように実検討をおこなっている会社はありません。)

次にどの程度費用がかかるか細かく確認していきます。

『エアコンの効率』『蓄熱暖房機の経済性』『床暖の快適性』
兼ね備える床下エアコン

実際に導入をするとしたらいくらかかるのか?を
【吹き抜けのあるダブル断熱の家】で検証してみます

1.イニシャルコスト=導入にかかるお金について

●エアコン本体について。暖房設備の必要容量は、次式で求めます。
Hmax(暖房設備容量 W/h)=n×{(ti-to)×qa-W}
n:補正係数 n=√(24/T) Tは暖房時間
ti:暖房設定室温 ℃
to:暖房設計用外気温 ℃
qa:住宅の総熱損失量 W/K
W:室内取得熱(W/h)

qaとWは、QPEXの計算結果から読みとることができます。入力が必要なデーターを一つ一つ見てゆきます。

床下エアコンを利用して、全館暖房、24時間暖かい家を考えていますが、一日中エアコンをつけている必要はありません。
暖房を消しても温度の低下が少ない家ですし、日中は日射でかなり温まります。

深夜電力を利用したいので、まずはPM11時〜AM7時の8時間。
蓄積暖房機はこの時間だけ加熱します。
n=√(24/8)=√2=1.73
ti:暖房設定室温は22℃としましょう。
to:暖房設計用外気温 金沢の厳冬期の夜というと0.5℃くらいでしょう。
qa:住宅の総熱損失量 W/Kは、73.69
W:室内取得熱(W/h) 1306
(日射熱取得と室内の家電や人体からの発熱を1時間あたりにしたもの)

Hmax=1.73×22-(0.573.691306
=1266W/h(小数点以下四捨五入)

一応これに、安全率1.7をかけてみましょう。
1266×1.7=2152W/h
エアコンの機種
『自動お掃除機能』定期的にお掃除してくれると、効率も高い状態が維持
『寒冷地対応』人を感知して風向を向ける機能は不要

建物の断面図

庇による日射遮蔽と床下エアコンの空気の流れ

S40XTCXP-W 畳数のめやす 能力(kw) 消費電力(W)
暖房 14畳(18~23㎡) 5.0(0.6~7.6) 1290(115~2,800)
冷房 17畳(18~28㎡) 4.0(0.5~4.5) 1,250(115~1,660)

と、なっています。
必要な暖房能力は2152W=2.152kWですので、中型機のS40XTCXP-W 1台で全館暖房が可能。
オープンシステムだと隠蔽配管することを考慮して¥176,040(材工共)となります。
全館暖房のメイン暖房器具としては、格安だと思います。他の暖房器具と違い、夏も使用できますし!

それから、付帯費用。大工さんの手間代が2万円くらい?
問屋から、給気・排気のためのガラリ木製2ヶ所、樹脂製1ヶ所の計 3ヶ所で、3.8万円
将来対応のサーキュレーターが1つ5千円、サーキュレーター用コンセント2千円、床下に、エアコン用コンセント5千円
基礎断熱のほかに、土間コン下に断熱材が必要になりますので、スタイロフォームの最上位品、スタイロエースFG75mm含めた付帯費用合計¥254,450(税込)
本体を含めた総合計は¥430,510

2.ランニングコスト=維持費にかかるお金について

暖房の設定温度はちょっと高めに、22度設定で計算してみました。

①地点 金沢市 省エネルギー基準 地域6.外皮性能基準値

外皮平均熱貫流率
UA値[W/㎡K]
冷房期の外皮平均日射熱取得率
µA値[-]
単位日射強度あたりの冷房期の日射熱取得量
mC値
単位日射強度あたりの暖房期の日射熱取得量
mH値
計算結果 0.26 1.4 3.45 3.69

②年間暖房エネルギー消費量

年間暖房用電気消費量
[MJ]
年間暖房用電気消費量
[kWh]
CO2発生量
[kg]
※2014年データ(原単位CO2)
住宅全体(MJ) 7,389 757 490

③年間冷房エネルギー消費量

年間冷房用電気消費量
[MJ]
年間冷房用電気消費量
[kWh]
CO2発生量
[kg]
住宅全体(MJ) 4.918 504 326

と、なっています。使うデータは赤で表示しました。
ちなみに、②年間暖房エネルギー消費量を灯油FFストーブバージョンにしてみると

年間暖房負荷
[kWh]
灯油消費量
[㍑]
年間暖房用電気消費量
[kWh](COP=1.0の場合)
CO2発生量
[kg]
住宅全体 11.811 319 1210 783

と、表示されます。CO2発生量は、深夜電力を使おうが昼間の電気を使おうが一緒ですので、この時点で比較できます。
エアコン暖房 住宅全体で 490kg、灯油FFストーブ 住宅全体で 783kg

まずは灯油。現在、金沢市ではだいたい1リットル78円程度のようです。
1年間、家じゅうを室温22℃に維持するために必要な灯油が319リットル×55=24882円
これはこれで、全館暖房の燃料としては決して高くはないと思います。

さて、これをエアコン暖房にしたらどうか。
年間暖房用電気消費量[kWh]は、 757kWh です。
北陸電力のホームページから、現在の従量電灯ネクスト、50A契約の電気料金を引用しています。
基本料金については、一緒とします。
電気料金は、120kWhまでは安いですが、そこまではほかの機器で使い切っているとします。
電気量       21.74円×757kWh= 16457.18円
燃料調整費     -1.07円×757kWh=    -809.99円
再エネ発電賦課金等   2.25円×757kWh= 1703.25円
合計                    17,350

次に床下エアコンを使用して、深夜電力を8時間使用した場合です。
昼間は土間コンクリートの蓄熱を利用するとします。
深夜電力の方は、床下エアコンのために2kW余計に契約したとしましょう。
深夜電力       757kWh× 1= 757kWh
基本料金       237.6円×2kW×12ヶ月= 5702.4円
電気量        12.51円×757kWh= 9470.07円
再エネ発電賦課金等  2.25円×757kWh= 1703.25円
合計                   16,876
年間暖房費は¥16,876となります。

工事費は壁付けのみと比べると高くなりますが、光熱費が安く抑えられます。また維持費も抑えることができ、メンテナンスも気にする必要がない『床下エアコン』は、最良の暖房方式です特に、オール電化や床暖房でご検討している場合は、床下エアコンにすることをお勧めします